そんな…呼び捨てなんて、
やっと"千尋くん"に慣れてきたところなのに…ハードル高くない?高いよね!?
「それはっ、呼び捨てに慣れてないっていうかっ、」
『元カレは呼び捨てなのに?』
「和樹はっ――」
『黙って。』
千尋くんの長い人差し指が私の唇に触れた。
千尋くんに言われた通りに口を閉ざす私と拗ねている千尋くんの瞳がぶつかり合う。
ドキドキドキ…と、こんな時でも私の心臓はうるさかった。
『俺の前で他の男の名前なんて呼ぶなよ。』
「・・・っ、」
『"千尋"って、呼んでみ?』
触れていた人差し指が離れて、逃がさないとでも言うように私の腰に絡まった千尋くんの腕。
どうしよう…っ
これ、呼ばないとダメなパターンだよね…っ?
密着した身体で千尋くんの体温を感じた私は、もうこの忙しない私の鼓動は千尋くんに聞こえてるんだろうなと思った。