あの優しい千尋くんが許してくれないってことは…相当だよね!?
何をやらかしたの、私!
もしかして…和樹に嫉妬してる…?
「あの、…和樹のことはもう――」
『何なの、"和樹"って。』
「へっ…?」
今まで覗いても逸らされていた視線が、和樹の名前を出した瞬間に交わった。
こんな時にも千尋くんの澄んだ瞳にトキメクって…どうかしちゃってる。
『俺は"千尋"って呼ばれたことない。』
「え…?呼んでるよ…?千尋くん、」
『そうじゃなくて、』
「っ?」
何で分かんないの?とでも言いたげな表情で、ぶすっと拗ねている千尋くん。
可愛い…。
いや、私が怒らせてるんだから反省の意を見せなきゃいけないんだろうけど、拗ねている千尋くんほど可愛いものなんてないと思う。
『俺は、"雛乃"って呼び捨てにしてるのに、雛乃はずっと"千尋くん"だし。』
「っ…!」
そ、それはつまり…呼び捨てに呼んでほしいということでしょうか…?
やっと千尋くんが拗ねている理由が分かった私だけど、急に呼び捨てなんてできないと思った。