2人が出ていって、店内は元の静けさを取り戻した。


「千尋くん、私達ももう帰ろう?」

『……。』


和樹と笑ってサヨナラができて安心した私は、隣にいる千尋くんに話しかけるけど、千尋くんは何も言ってくれなかった。

…聞こえなかったのかな?


「千尋くん、家に帰っ――」

『やだ。』


今度は聞こえるように、千尋くんの顔を覗き込んだのだけど、ぷいっと顔を逸らされてしまった。

やだって…。

私…、千尋くんに何か気に障るようなことしちゃった…?

千尋くんを引っ張って帰ろうとしたいところだけど、私はソファの奥で通路側には千尋くんが座っているから出ることもできない。


「お、怒ってる…?」

『…。』


怒ってるんだ。

何も言ってくれない千尋くんになんて言えばいいのかわかんなくて、見つめることしかできない。


「あ、あの…その、ゴメン…ね?」

『許さない。』


えぇっ!?

どこで千尋くんの怒りスイッチを押しちゃったのか全然分からなくて、あたふたと慌てる。