『…そう、泊り。』

『はっ!?日帰りって話――』

『アンタが遅いから新幹線のチケット取れんかったったい!ホテル予約したっちゃけん、つべこべ言わんと!』

『……っ、』


朱莉に睨まれて、和樹は何も言えなくなっている。

うわー、尻に敷かれてるなー。

まぁ、和樹が朱莉に睨まれたら何も言えなくなるのは中学のころから変わってないけど。


「ここからホテルまでの道、大丈夫?分かる?」

『うん、大丈夫。今日は本当に押しかけてごめんね。…ほら、和樹!雛乃に最後なんか言うことあるっちゃないと!?』


和樹の腕をパシンッと叩く朱莉の顔は、まるで手を焼く息子を怒る母親のようだった。


『…雛乃、本当にゴメン。俺…やっと前に進めるわ。』

「うん。」

『隣の彼氏と…幸せにな。』

「っ!……うん、和樹もね。朱莉、今日はありがと。」

『いいのいいの!ほらっ、行くよ!』

『ちょっ、あんま引っ張んじゃねーよ!』


朱莉に引っ張られながら、和樹は喫茶店から出ていった。

3年って…すごいな。

3年前はもう和樹と話すことなんてありえないと思ってたのに。

あんなに普通に話せるなんて。