『俺はまだ…雛乃が好きなんよ。何を今更って思っとーかもしれんけど、雛乃が引っ越してよく分かった…俺には雛乃だけやったってことが…!』

「……っ、」


何、それ。

冬休みに、不安げに和樹のことを話してくれた朱莉の顔が浮かんだ。

あの話…本当だったんだ?


『だから、もう一度俺とッ――!』

「和樹ってバカっちゃね。」

『は…?』

「本当、バカ。」


今の和樹が求めてるのは私じゃない。

それに気付けない和樹は――ただの馬鹿だ。

バカバカと言う私をポカンと見る和樹に笑ってしまいそうになる。


「和樹はただ、私と過ごした時間に酔いしれとるだけやないと?過去ばっかり見て、今を過ごしとらんやん。いつも和樹のそばにいてくれるのは誰なん?和樹に笑いかけてくれる人は誰?いい加減、目覚ましんしゃい。」

『………っ、』


私を追いかけてこんなとこまで来て…。

まぁ、誰が和樹の背中を押したのかなんて、本人から聞かなくても分かるけどね。