――カランカランッ
千尋くんに連れてこられてやってきたのは、千尋くんの家から近いこじんまりとした喫茶店。
こんなところにこんなお店があるなんて知らなかった…、と店内の内装を見渡していると、不安げにこちらを見つめている和樹を目が合った。
3年前は姿を見るだけで高鳴っていたのに、今は何も感じない。
それよりも、喫茶店に入ってすぐに離された手に寂しさを覚えた。
『じゃあ、俺は――、』
「待って、千尋くんッ」
『ん?』
和樹のいる席までやってきて、この場から立ち去ろうとした千尋くんの腕を咄嗟に掴む。
「一緒に、いてほしいの…。」
『ッ……分かった…。』
不安げに千尋くんを見上げると、小さく頷いた千尋くんに安堵して、2人掛けのソファに座った。
その隣に、千尋くんも恐る恐る座ってくれる。
勇気をもらいたくてソファに置かれていた千尋くんの手を掴むと、握り返してくれた。