「その時私ね…一気に冷めたの。和樹への気持ちが。あー、和樹は私のことどうでも良かったんだって。私が離れるってなると他の女の子に行っちゃうような人なんだって。私と和樹の気持ちは…一緒じゃなかったんだーって。」
私とは違って、和樹の私への想いは紙切れ一枚よりも軽く感じられて。
一番近く感じていた存在が、一気に離れて遠く遠くにいるように感じた。
「だから、和樹に言ったの。私より松岡さんの方が好きなの?って。そしたら…、松岡は俺から離れていかないって。和樹はただ…そばにいてくれる人が欲しかっただけなの。ただどんな自分でも受け入れてくれて、ずっと一緒にいられれば、それでいい。私じゃなくていい。誰でもいいんだって、その時分かった。」
和樹の"好き"と私の"好き"は形が全然違った。
交わっていると思っていた想いは、平行線のままだった。
「松岡さんにも謝られたんだけど…許せなかった。心狭いでしょ?自分は捨てられたんだから、2人には関係もないっていうのに、元カノ面してさ。……バカみたい。」
『雛乃…。』
ムカつく。
浮気をした和樹も、私と和樹が付き合ってるってわかってて和樹に近づいた松岡さんも、…自己中心的で自分に非もあるくせにそれに気づかずに松岡さんを傷付けた――私も。
「…でも、あの頃みたいに泣くほど悲しくないの。私には…千尋くんがいるから。昔のことなんて…気にしてない――っ」
初めて千尋くんの前で曝した自分の醜い部分。
これ以上話したらもっとドロドロとした黒い自分が出てきそうになって、話を打ち切ろうとした瞬間、私は千尋くんに抱きしめられた。