『アンタ…雛乃の彼氏か?』

「まぁ…そうですね。」


喫茶店に入って、4人用テーブルを雛乃の元カレと囲む。


『何でこんなチャラそうな奴を…』

「アンタほどやんちゃはしてませんけど。」


男の言い草が気に入らなくて間髪入れずに言い返すと、ギロリと睨まれた。

おー、怖。目つき悪すぎだろ。何でこんなやつを好きだったんだ?雛乃は…。


「…俺、雛乃探してくるんで。」

『俺もッ――』

「アンタはここで待っててください。雛乃を探して迷子になられたら困るんで。」


愛想笑いを浮かべて男を見下ろすと、反論ができないのか顔を俯かせて歯を食いしばっている。

――いい気味だ。

ここは東京。…アンタの好きにはさせない。


「ちゃんと雛乃連れてくるんで、大人しくここにいてください。」


"大人しく"という単語を強調させて言うと、…分かったと小さな声が聞こえた。

喫茶店のマスターに一旦ここを離れることを話した俺は、今頃泣いているであろう姫の元へと走り出すのだった。