――高遠 Side――
楽しかった動物園デート。
その帰り道、雛乃を呼ぶ博多弁の男と遭遇した俺と雛乃。
必死に雛乃に謝る男に、雛乃は一切受け入れない態度を見せ、終いにはビンタを食らわせていたのだから、俺は驚きを隠せずにいた。
"和樹なんか…っ、大っ嫌い!"
そう言ってどこかへ駆けていった雛乃を止めることはできなかった。
俺の目の前には、雛乃に"和樹"と呼ばれていた俺よりも身長が低くて少しやんちゃな印象が残る男が顔を歪ませて立っている。
多分コイツ…雛乃の元カレ…だよな?雛乃が福岡にいた時の。
フツフツと湧き上がる嫉妬と怒りをどうにか押さえ込んで、まずはこの散らかった状況をどうにかすることが先決だと考えて口を開く。
「…あの、」
『あ…?』
声をかけると、眉を寄せて思いっきり睨まれた。
俺だって言いたいことは山ほどあるっつーのに…という苛立ちを沈めて、俺は平然を装ってとりあえず場所を移動しませんかと近くの喫茶店に男を誘った。