『俺…っ、雛乃のこと――っ』
「何しにきたん?」
脳裏に蘇る3年前のあの事。
私じゃない他の女の子と腕を絡ませて仲良さげに歩いていく和樹の姿。
忘れたと思っていたのに、昨日のことのようにあの悪夢のような現実が思い起こされていく。
『雛乃、俺はっ――!』
「雛乃って呼ばんとって!私…っ、あの時言ったやろ?もう私の前に出て来んでって!」
『……っ』
きらい嫌いキライ
和樹なんか、大っ嫌いだ。
『あの時は…ゴメン。俺…本当にどうかしとった。雛乃だって知らんとこに行くってなって不安がっとったとに、俺…雛乃と会えんくなるって思ったら…、』
「それで浮気したと?――そんなん理由にもなっとらんし。私が辛いって思ってるって分かっとって、松岡さんと仲よくしとった和樹なんかに、私の気持ちが分かる訳ないっちゃん!」
よりにもよって、私のトモダチと…浮気したなんて。
恋人にもトモダチだと思ってた人にも裏切られた私の気持ちなんて、和樹に分かるはずがない。
『それは謝るけん、俺の話を――ッ』
パチンッ!
千尋くんと握っていた手を離して、和樹の頬に力のままに叩き込んだ手の平は、ジンジンと痛みを孕んだ。
「和樹なんか…っ、大っ嫌い!」
『ッ――』
『雛乃っ!』
和樹の弁解なんて聞きたくもなかった。
だから、千尋くんの私を呼ぶ声も無視をした私は、逃げるようにその場から走り去った。