「ち、千尋くん…?」
『ゴメンゴメン…っ、あー可笑しい…っくくくッ』
笑いが堪えきれないのか、訳が分かっていない私を放置したまま、涙を流して笑い転げている千尋くん。
ゴメンって…全然反省してるようには見えないんだけど…?
なんだか拍子抜けしたような気分になった。
『――雛乃。』
「…?」
『雛乃が頑張る必要なんてないから。』
「え…っ?」
やっと笑いのツボから抜けてくれた千尋くんが私の頭にその大きな手を置いた。
その手に私の心はドキリと飛び上がる。
『雛乃がそういう経験ないのは想像できてたし、雛乃に怖い思いをさせてまでしたいとは思わないしね。』
「っ……千尋くん…。」
その優しい手で撫でられる。
柔らかい微笑みを向けてくれる千尋くんは、なんて素敵なんだろう。
妙な緊張から解放されて安心した私が泣きそうになっていると、泣かない泣かない、と抱きしめられた。