「は…っ、ちひろく――っ」
力が入らない私は完全に千尋くんに寄りかかった状態で、行き場をなくした私の手は千尋くんのシャツと掴んで皺を寄せている。
抵抗もできない私のほっぺやおでこにキスを落としていく千尋くんにされるがまま。
どうしよう――やっぱり、そういうこと、するの…っ?
『雛乃、』
「――っ!待って、ちひろくんっ…!」
『・・・?』
またキスしようと近づいてきた千尋くんの唇を、咄嗟に手で覆った。
「その…っ、あの、まだ心の準備が…っ」
『?』
千尋くんの唇に触れていた手を離して、千尋くんと目を合わすこともできずに口ごもる。
逃げ腰になる私の腰をぐっと引き寄せた千尋くんは、リンゴみたいに赤く染めた私の顔を覗き込んだ。
「……っ」
『雛乃…俺とのキスはイヤ?』
「っ!」
眉を下げて不安な色を浮かべた千尋くんの瞳とぶつかって、私はブンブンと首を振る。
千尋くんとのキスが嫌なわけじゃない。