部屋で2人っきりというこの状況をなんとも思っていないのか、オレンジジュースを飲み干している千尋くんをチラリと盗み見た。

あ…、髪濡れてる…。


「千尋くん、」

『ん…?』

「風邪ひいちゃうよ?髪乾かさなきゃ…。」


雨に打たれて身体も冷えただろうし、お風呂入ってきたら?と言うと、千尋くんは大丈夫と言った。

でも…髪くらいは乾かしておいたほうがいいとは思うんだけど、本人がいらないと言うなら強くは言えなかった。


「…寒くないの?」

『うん。』

「そっか…。」


意外と男の子って丈夫なんだなーとぼんやりと思う。

確かに、お兄ちゃんもあまり風邪ひいてるとこ見たとこないかも…。

隣にいる千尋くんに意識を向けちゃうとどうしても要らぬことを考えてしまいそうだから、無理矢理別のことに意識を逸らしていると千尋くんが空のコップを簡易テーブルに置くのが見えた。


『――やっぱり寒いかも。』

「えっ――…ッ!?」


掴まれた左腕。

ぐいっと決して弱くはない力で引き寄せられた私は、大きな身体に包まれた。