『――上がって。』


千尋くんと相合傘をしてやってきました千尋くんの家。

ここに来るのは千尋くんのお見舞いをしに来た時以来だけど――…、あの時とはまた違ったドキドキが私を襲っている。

それもこれも、いつかの華ちゃんのせいだと思いたい。


『とりあえず、俺の部屋行っててくんない?分かる?』

「うっ、うん…!」

『俺、着替えてから行くから。』


玄関でそんなに高くないヒールを脱いだ私の頭をポンポンと撫でてどこかへ行ってしまう千尋くんの左肩は相合傘をする前よりもびっしょりと濡れていた。

私が雨で濡れないように私の方に傘を傾けてくれてた千尋くんに、胸をトキメかさずにいられなかった。

千尋くんも濡れる、と言って傘を千尋くんに傾かせようとしても、俺は家で着替えるから、と言って頑なに傘を持つ手を離さなかった。

シーンと静まり返った千尋くんの家。

今日は誰もいらっしゃらないのかな…?と思いながら、私は千尋くんに言われた通りゆっくりとした足取りで千尋くんの部屋へと向かった。