――「うわ…、すっごい雨…。」


華ちゃんとの破廉恥な会話のことなんて忘れかけていたホワイトデーの朝。

お気に入りのワンピースに身を包んで気合十分な私の部屋から覗いた外は、じゃじゃぶりな雨のせいで視界が悪い。

カーテンレールからつるされた、昨日の夜願掛けとして作ったテルテル坊主がなんとも空しい気持ちを増幅させた。

テルテル坊主を吊るしたら晴れるなんて、ウソじゃん…。


動物園、行けるのかなー。と思っていると、千尋くんからメールが届いた。

内容は、私のマンションに着いた、というもの。

相変わらず待ち合わせ時間を遥かに巻いてやってくる千尋くんの登場に驚きながら、準備していたお出かけ用のカバンを引っ掴んだ。


『この雨で行けるとー?』

「分かんない…、けど、行ってきます!」

『いってらっしゃーい!』


リビングにいたお母さんに見送られて、私は千尋くんのいるマンションのエントランスに向かう。

お兄ちゃんはここ最近自主研究であまり家には帰ってきていない。