――ピピッ


千尋くんがお盆を持って部屋を出ていってちょっとして、脇に挟んでいた体温計が鳴った。

差し込んでいた体温計を脇から抜いて小さな画面を見ると、36.9℃の文字が表示されていた。

熱下がってる…。

千尋くんが付きっきりで看病してくれたからかな?…なんて、そんなことを思いながら、千尋くんが傍にいてくれる幸せを実感する。


ガチャッ

『計った?』

「うん、…36.9℃だって。」

『熱下がったな。良かった。』


戻ってきた千尋くんは、安心したように微笑んで私の傍に座った。

もうちょっと寝る?と私の容体を心配してくれる千尋くんに聞かれて、ううん、と首を振った。

まだこの幸せに浸っていたい。それに…寝ちゃったらもったいないでしょ?せっかく千尋くんが来てくれたのに。

そう思うのはおかしいかな?


『…雛乃、開いてる…。』

「えっ?」


突然私の方に伸びてきた手に、私は驚いて固まる。


『風邪ひくよ?』

「……っ、」


体温計を計った時に開けていたパジャマのボタンに触れた千尋くんの手は、ゆっくりとそのボタンをとめた。