――高遠 Side――
昼。
俺は泣き疲れて眠った雛乃の寝顔を見つめていた。
眠っている雛乃の布団の傍で座っている俺の手の中には、泥だらけのお守り。
青々しかったそのお守りは、泥で汚れてしまってこなれ感が強くなっている。
チリン、とわけもなく鳴らすお守りに付いている小さな鈴の音を聞いて、俺の心はじんわりと温かくなる。
島津に捨てられたこれを探していた雛乃はどんな気持ちだったんだろう。
雛乃が島津にどんな酷いことを言われたかは、一切雛乃が言わないから俺には分からないけれど。
毎日毎日、一人で誰にも見られないところで目が赤くなるまで泣いてたことが容易に想像できてしまって、胸が潰れるくらいに締め付けられた。
やっと震えている小さな身体を捕まえることができて、俺の手で雛乃の涙を拭うことができて、焦ってばかりいた俺の心が落ち着く。
何より、雛乃がこんなに辛い思いをしてもまだ俺のことを想ってくれていると知った時、言葉にならないくらいどうしようもなく嬉しかったんだ。