『雛乃は…強いな。』
「…そんなことないよ。」
私は強くなんてない。
今も、千尋くんの手で支えてもらっているから、立ってられるんだ。
押しつぶされそうな心を、どうにかして耐えてるだけ。
貴方がいなきゃ、私は何もできない。
「千尋くん、」
『ん?』
「…ギュッてして…っ?」
いつもは恥ずかしくて言えない言葉を、小さな声で言ってみる。
目を見開いて驚きを見せた千尋くんは、笑顔でおいでと私を引き寄せた。
『どうしよ、雛乃が可愛すぎるんだけど…。』
「千尋くん、大好きー。」
『っ……///』
千尋くんに抱きしめられて、心が一気に白く染まっていく。
千尋くんが傍にいてくれたら、千尋くんと触れ合えるだけで、何度だって立ち上がれる。
どんなにボロボロに傷ついても、彼の手があればきっと私は立ち上がれるだろう。
『…俺も好き。』
鼓膜を叩く千尋くんの柔らかい声に、私は頬を緩ませる。
もう、私の瞳に涙は溜まっていなかった。