私が?
私が千尋くんを待ちきれないなんてこと、絶対にないのに。
「だっ…て、千尋くんが私に帰れって…島津さんが――」
『ウソなんだ。』
「っ――?」
全部ウソなんだ、という千尋くんを私はただ見つめるしかできない。
全部って…何から何までなのだろう。
『全部、島津がウソついてたんだ。俺は、雛乃に先に帰るように伝言を島津に頼んだりしてない。』
「へ――っ?だって、カバン…っ、島津さんが取りに…っ」
あの時、島津さんは千尋くんのカバンを取りに来た。
千尋くんに頼まれたって。
あれはどうゆうことなの…?
『俺は、島津に雛乃から預かったって言われて受け取った。』
「そんな…っ」
じゃあ、島津さんの言ったことはウソだったって言うの…?
信じられない。
私に接する島津さんはとても堂々としてて、とてもウソついてるようには見えなかった。