「あり、がと…。」
千尋くんに部屋まで運んでもらって、私は布団に横たえた。
私に掛け布団をかけてくれる千尋くんを、信じられない思いで見つめていた。
千尋くんが来てくれるなんて…私は幸せな夢を見ているみたいだ。
『今日、雛乃一人?』
「うん…。お母さんは仕事で…、お兄ちゃんも大学…。」
千尋くんが来るまで寝ていたからか、横になると頭痛は少しだけ引いて行った。
そっか、と言ったきり黙ってしまう千尋くんを見つめた。
「千尋くん、学校は……?」
『あー…、雛乃が風邪で休んだって聞いて、サボったんだ。』
「ッ……」
気まずそうに言いにくそうに口を開く千尋くんは中々私に目を合わせてくれない。
そんなに心配してくれたの…?どうして?
島津さんから聞く千尋くんと、目の前にいる千尋くんはあまりにも対照的過ぎて、私はどっちを信じればいいのか分からなくなった。