『風邪ひいたって聞いて…大丈夫?』

「あ…、うん…っ」


玄関を開けると冷たい風が一気に室内に入ってきて、尋常じゃない寒気を感じた私は、彼を中に入れた。

なんで、千尋くんがここに…っ?

風邪ひいたこと知ってるってことは…、華ちゃんが話したのかな…?


「とりあえず上がって?…こっちに――」

『あっ、雛乃!』

「ッ――!」


リビングに行こうと足を踏み出した瞬間に、身体の力がフッと抜けて倒れそうになる私を、寸でで中に入っていた千尋くんの大きな腕に受け止められた。


「ごめ――っ、」

『いいから。…部屋に行けばいいよね?』


全く力が入らない私の体はフワッと浮いて、千尋くんに姫抱きにされる。

熱に浮かされている私は、そのガッシリとした腕に身を任せた。