『さっきから話聞いてたら、高遠から直接聞いたわけじゃないんだろ?全部、島津っつー女に言われただけじゃねーかよ。』
「……でも、お守りが…。」
確かに千尋くんからは一言も聞いてない。
でも、…だったら、この捨てられたお守りはどうしたらいいの?どんなふうに解釈したらいいの?
絡まった糸のようにがんじがらめになって解くことのできそうにない事実を前に、私は目を背けたくなった。
ギュッとお守りの入ったポケットを無意識に握る。
『まぁまぁ、今日はこれくらいにしてさ!雛乃も、もう帰ったほうがいいよ。このままじゃ風邪ひくから。』
「あ…うん。」
どんよりした空気を察したのか、華ちゃんが明るい声で話を変えた。
――そうだ。早く帰らないと。
『なんか心配だから、雛乃の家まで送る。』
「え……っ、いいの?」
『当たり前じゃん。』
私と華ちゃんの家は反対方向なのに、わざわざ私の家まで着いてきてくれると言う華ちゃんに、私はまた涙を流しそうになる。
「…ありがと。」
『いいって。…ってことで、宏太あとはよろしくーっ』
『へいへい…。』
こっちまで気分が明るくなるような笑顔を向けてくれる華ちゃんと一緒に、教室を出たのだった。