パタンッ
お風呂から上がった私は、濡れた髪はそのままに肩にタオルを掛けて自分の部屋に戻った。
あー…、気持ち良かった。
いつも部屋でくつろいでいる布団の上で、肩にかかったタオルを掴んで頭をゴシゴシと擦って髪の水分を飛ばす。
ふと目に写り込んできたのは、簡易テーブルの上にある私の携帯電話。
掴んでいるタオルをそのままゴシゴシしながら、空いている片手で携帯電話を手にする。
携帯電話を開いて、アドレス帳を開くボタンを押す。
"高遠 千尋"で登録されたアドレスまでスクロールして、そのまま手が止まった。
高遠くんと電話したいな…。メールでもいい。
でも、決定ボタンが押せない臆病な私。
高遠くんの声が聴きたいだけなのに、おやすみなさいの一言を伝えたいだけなのに、それも出来ないなんて。
はぁー…っ、と重い溜め息をついていると、ブブブッとマナーモード設定にしていた携帯電話が震えた。
「………っ!」
画面に表示されたのは、発信元が"高遠 千尋"の着信画面。
高遠くんから電話…っ!?