『何で島津?』

「島津さんと帰るんやろ!?私なんか放っといて、早く島津さんのとこに…っっ、」


行ってあげて、という言葉は出なかった。

突然私の体を包み込んだ温もりに、私の涙は一瞬で引いていく。

私の背中に回っているのが高遠くんの腕だと、私の頬にピッタリとくっついているのは高遠くんの逞しい胸だと気付いた時には、マスクを外した高遠くんが私の頬を大きな手で包み込んでいた。


『……ヤキモチ?』

「っっ!」


図星をつく高遠くんの言葉に、私は何も言い返せない。

私の気持ちはもう高遠くんにはバレバレなのだろう。目に見えて分かるこれから言われる言葉に絶望している私とは裏腹に、高遠くんは満足げな笑みで微笑んでいた。


『――言って。島津に焼いたの?』

「っ……分かってるくせにぃ…!」


酷い。本当に酷いよ。

この状況になっても、私に言わせようとするなんて。

これ以上ない恥ずかしさに、私は涙目で頬を赤く赤く染めた。