「高遠くんは、早く帰りなよ。」

『いや、手伝うよ。』

「っ……」


何でわかってくれないの。

どうして高遠くんはこんなに鈍感なの。

女の子を泣かせちゃダメなのに。

2人の邪魔なんてしたくなくて、私は高遠くんの手から黒板消しを取り上げた。


「帰って。」

『…小日向…?』

「帰って!」


もうやだ。辛すぎるよ。こんな気持ち…苦しすぎる。

2人の仲睦まじい姿がこんなにも易々と思い描けるなんて。

これ以上高遠くんを前にして何も言わなずにいられる保証なんてなくて、ついついキツめの口調になった私に、高遠くんは驚いたようで目を見開いて私を見ている。

何で…私は高遠くんを好きになってしまったん?


『何、怒ってるの?』

「怒ってなんてないっ!私はよかけん…っ、早く行きーよ…っ!」


抑えられない感情。

大粒の涙を流しながら、高遠くんから少しでも離れようと後ずさりをするけど、高遠くんが追いかけてくるから意味がない。

こんなに辛いなら…やっぱり恋なんて、しなきゃ良かった。