「…帰るんでしょ?」

『うん。』


やっぱり、島津さんと帰るんだ。

あっさりと笑顔で肯定した高遠くんに、なんて顔をすればいいのか分からなくて顔をそらしてしまう。


「…またね。」

『…?手伝おうか?』

「……え?」


黒板消しを持つ手を動かしながら、このジレンマを高遠くんに気付かれないように、やっとのことで紡いだ別れの言葉。

それなのに、高遠くんは私を手伝うと言って、私のいる段差に上がってきた。


「…あの、高遠くん?」

『ん?何?』


背伸びしたって上端に届かなかった私とは違って、黒板消しを持った高遠くんは背伸びなんかせずに楽々と黒板の上端を消していく。

何で高遠くんは私の手伝いなんてしようとしてるんだろう?


「…申し訳ないから、しなくていいよ。」

『?別に申し訳なくなんて思わなくてもいいのに。』

「いや、そうじゃなくて…っ」

『?』


鈍感な高遠くんは、言葉に詰まっている私を不思議そうに見下げている。

私が申し訳なく思っているのは、高遠くんにじゃなくて、島津さんの方なのに。

一緒に帰るなら、私の手伝いなんてしてたらダメでしょ?