…高遠くん、島津さんと帰るんだ。

そう思って、私はこれ以上2人の会話を聞かないように目の前の黒板消しの作業に没頭する。

背伸びをしても黒板の上端には届かない。あの時遠慮なんてせずに、華ちゃんに手伝ってもらっておけば良かったと今更ながらに後悔する。

でも、そんなことしたって華ちゃんは戻ってこないわけだし、今の状況は変えられないわけだから、届かないところは後で椅子を使って消そうと後回しにして横に移動する。

早く帰りたい。こんなどんよりした気持ちを顔を洗う水とともに洗い流したい。

自分の真っ黒な醜い感情を消すように目の前の黒板を無心で消していると、ガララッと教室のドアが閉まる音が聞こえた。

2人とも帰ったんだと、ドアの方向に目を向けると…、


「っ、高遠…くん?」

『ん?どうした?』


ドア付近には、私を見つめている高遠くんがいた。

……何で?