――忘れてた。

今日、私日直だったんだ。


『雛乃、帰ろー!』


帰りのHRが終わって帰りの準備をしていると、私の席に華ちゃんがやってきた。

ニコニコ顔の華ちゃんに、私は申し訳なさが募る。


「ごめん、華ちゃん。私日直なの忘れてた。」

『えっ、マジ?…私、終わるまで待ってるよ?』


放課後の日直の仕事は、学級日誌の記入や黒板消し、教室の簡単な掃除などがある。

私はトロいし、こんな面倒なことを華ちゃんにさせるわけにもいかない。

それに…、


「ううん。先に帰って。…久しぶりに久松くんと帰ってみたら?」

『え?』


華ちゃんはもうちょっと自分の恋に積極的になってみたらいいのに、と前々から思っていた私はこの機会に言ってみる。

私のために色々と助言してくれる華ちゃんだけど、華ちゃんも幸せになってほしいんだ。

しばらく高遠くんと話し込んでいた久松くんを見つめていた華ちゃんは、私に向きなおって笑顔を浮かべた。


『ありがと。一緒に帰れるか、聞いてみるね。』

「うん。」

『じゃあねっ!また明日!』

「またねーっ」


久松くんの元へ駆けていく華ちゃんに手を振り、私は帰り支度を終えて日直の仕事に取り掛かった。