言葉を失った俺達の足は、示し合わせたわけでもないのに村唯一の小学校へと真っ直ぐに向かった。皆で共に過ごした学び舎。まだ、純粋だった頃の清い想い出が沢山詰まった場所。


「……俺さあ、丁度こンぐらいのガキん時、美菜のこと……好き、だったんだ」


橙色に染まるグラウンドを、低い位置で見つめながら幸次は寂しそうに呟いた。


「そうだったのか」
「聖は女子に興味とかなさそうだったもんな」
「……あー」
「お前、モテてたのによ」


ブチッと聞き心地の良くはない音で雑草を千切り、その欠片を悪戯に風に漂わせていく。ふわふわと軽やかに、不安定に、踊る緑。


「俺は……同級生より先生とかの方が気になってた、かな?」
「ははっ、年上かよ!ま、聖らしいっちゃーらしいよなあ。でさ、モテてるっつったら聖もそうだけど千秋だったっけ」
「ああ、それは流石に俺も知ってた」


俺を挟み、ぽつりぽつりと交されはじめた会話。

加われずに居るのはあの日に置き去りにされたままの醜い自分。