そんな意味深な一言を残し、美菜は再びその姿を消した。そうして俺は思い出す。昨夜の夢の内容を。リアル過ぎるあの悪夢を。


『千秋、こっち』
『はやくはやく!』


懐かしい友の声に導かれ、ゆっくりと進む見知らぬ道。

ぺたん、ぺたん、ぺたん。擦り減った靴底が間抜けな音を奏でる。ぺたん、ぺたん、ぺたん、グチュ。なにかを踏んだ。なにかが散った。生臭くて、粘っこくて、温かい、赤い、赤い、なにか。


『千秋のせいだよ』

腕のない綾。

『私のカラダ、返して』

脚のない早紀。

『《ふふ、ふふふフフふ》』

そして二人の隙間から笑うのは美菜。


それは朱の境界線。次にあちら側へ渡るのは誰だ。


(誰だ、なんて何を悠長なことを……)


現実と、虚構の狭間で混濁する心。

まるで終わりの見えない鬼ごっこ。その終幕は恐らくこの命が潰える時だけ。俺達の命が消える、その時だけ。