しかし、当の王子様は何やらとても気だるそうで、機嫌と目付きも悪く、体も若干斜めに傾いていた。
わざと姿勢を悪くしているのだ。
でも彼のその態度は、せいぜい『緊張しているんだろう』、
くらいにしか思われていなかったので、誰も彼のイライラには気が付かなかった。
「えー、木崎君は、お家の事情で、最近こっちに来たそうです。
もうすぐ夏休みという中途半端な時期ですが、みんなも仲良くしてやれな!」
「はーい!」
同時に、女子のきゃあっという黄色い声が大音声で響き、倫太郎はうんざりした様子で溜め息を吐いた。
だが、転校生の出現に湧く教室の中で、一人だけ何のリアクションもとっていない生徒がいた。
突っ伏して居眠りをしていた、七海子である。