やがて、前の席のまっちが七海子がまだ眠っていることに気付き、慌てて彼女を揺り動かして起こした。
 

七海子は一瞬びくりとなり、目を擦りながらんーっと体を伸ばした。


そして、このうるさいのは何だろう? と呑気に目を開いた。
 

その時、倫太郎と七海子の視線がぶつかった。
 

お互いに、とても驚いた顔をした。
 

しかし、二人の表情は、決して同じものではなかった。


倫太郎は七海子を見付けるとすぐに、思い切り彼女を睨みつけた。
 

一方、七海子は――なぜか、怯えたように固まっていた。


彼に睨まれたからではない。


彼女は、倫太郎の『ある部分』を見つめていた。


(なんで、あの人に……!)