「……っ……、……ひっ」
狭い室内に響く、私の泣き声。
ここは、使わない資料ばかり置いてある、第二資料室。
泣きたくなれば、いつでもここにこもるんだ。
……先輩……っ。
……先輩、好きです。
好きなんです。
だけど、だけど、……大嫌いです。
そんな先輩に翻弄されてしまう私は、バカなんですよね。
そんなこと、ずっと前から知ってます。
でも、やっぱり、酷いです。
だって私は、こんなに好きなのに。
……先輩は、私のこと、好きじゃないんですよね。
ただの、遊び相手みたいなもの……なんですよね。
先輩の周りには、他にもたくさん可愛い女の子たちがいる。
私はきっと、その子たちよりも可愛くないから。
だから、その子たち以下だ。
「……う~~……っ」
ふと、うつむいていた顔を上げる。
その瞬間、私はなにかに気がついた。
……ん??
これは……なに?
オレンジ色の視界の中で、目の前にある長机の上になにかがあるように見える。
ぼやけて見えないので涙をぬぐった。
その小さななにかに手を伸ばす。
それは……
……飴玉、だった。
そしてその飴玉の横にあった付箋には……
『涙が止まる、おまじない』
と丁寧に書かれていた。
確かに、さっきまで溢れ続けていた涙は消えた。
いったい、誰が……。
私がここでよく泣くことを、知っていたということだろうか。
……疑問はいっぱいあるけれど、飴玉の包みを開いた。
淡い桃色をしていて、無性になめたくなって。
少しも迷うことなく、口に含んだ。
それはそれは、甘くておいしいストロベリーキャンディーだった。
だけど、甘いだけじゃない……酸っぱさが追いかけてくるその味は、
……甘酸っぱい、恋の味。
涙が一つ、こぼれた。
────────『涙が止まる、おまじない』
かけてくれた人と出会うのは、もう少し……先のお話。