「好きです。」
……って、言えたら、どれだけいいんだろうな。
まあ、だからと言っていざ言える状況になったとしても、簡単には言えないだろうけど。
なんて考えながら、斜め前の君を見つめる。
さらさらの髪に、整った顔。
長身で運動ができて、それでいて頭がいい。
ちょっとクールだけど、でも優しくて。
……だから女子の皆さんがほうっておくわけがない。
君は気づいていないかもしれないけど……
知ってた?君ね、人気があるんだよ。
だけど、どこか女子を寄せ付けないオーラがあって。
それに、君は……
彼女持ちだから。
だから、みんな近づけないの。
私もその一人なんだろうなって思うと、切ない。
「……おい、行くぞ。」
「あ、うんっ。待って……!」
そんな私だけど、別に関わりがないわけじゃなくて。
むしろ他の子より接する機会は多いと思う。
……同じ委員会、だから。
だから私は毎週金曜日の放課後が楽しみで。
いつも君に声をかけられるたび、にやけそうになるのを、必死でこらえてるの。
……君は知らないと思うけどね。
でも……
「……うん。そ。だから少し遅くなる。」
毎週毎週、その彼女に電話をする君を見るのは……正直辛いよ。
電話越しにその彼女へ向ける優しい顔は、普段の君には絶対ないもので。
その顔を見てしまうたびに、胸が痛むの。
あぁ、私ってバカだなぁ。
なんでこんな恋してるんだろう。
そう、毎回思う。
だからいっそのこと嫌いになりたくて。
君には悪いけど、常に悪いところ探しをしているの。
……でも、見つからない。
悪いところなんて、ないの。
授業中ちょっと居眠りしちゃうとか。
音楽聴いてて人が話しかけても気がつかないとか。
友達の話を聞いてて、面白くないときは愛想笑いもないとか。
そんなの、君らしいなって思うだけで、悪いだなんて思えない。
ほんと、君がなにをしていても、好きになるばかりで。
……君には、かなわないな。
いつか、この思いを告げるときがくるのだろうか。
君のことが好きです、と。
「……ねえ、彼女さんのこと、本当に好きなんだね。」
「……そう見える?」
あぁ、君がそう微笑んでいる限り、ないだろう。
君のその顔が、見られる限り。
私は、君が幸せでいることを、ずっと願っているから。
「おい、早く行くぞ。」
「ごめんっ!靴紐がほどけて。」
「おせーよバーカ。」
──────だから毎週金曜日は、一言でも多く、喋ってね。