「もしもし、健!?」
そんなあたしの声に、翔太があたしにチラ、と目を遣る。
「……」
それに気づかずにあたしが健の声を待っていると、やがて電話の向こうで健が言った。
“あ、もしもし世奈?遅くなってごめん。お前今どこにいる?”
「!」
“全然姿見えないけど…お前もしかして帰った?”
そんな健の問いかけに、あたしは声のトーンを落として言う。
「うん。ごめん。もう学校にはいない」
“…そっか”
あたしがそう言うと、健の沈んだような声が聞こえてきた。
その声に、あたしが思わず「どこかで待ち合わせでもする?」と言いかけた、その時…
「世奈ちゃん、」
「!」
“!!”
突如、翔太が後ろからあたしを抱きしめてきて、耳元で甘く名前を囁いた。
…まるで、電話の向こうにいる健に聞こえるように。
「ちょっ…翔太!」
あたしが慌てて翔太を離そうとしたら、電話の向こうで健が言う。
“…なんだ、お取り込み中かよ”
「ちがっ、そういうわけじゃ…!」
“邪魔してごめん。切るわ”
健はそう言うと、一方的に電話を切った。