健はその女子からスポーツドリンクを受け取ると、
「ありがとう」
そう言って、凄く優しい笑顔で笑った。
「…っ、」
その姿に、何故か胸が切なくぎゅーっと締め付けられる。
さっき買ったばかりの缶コーヒーが、あたしの手によってかっこ悪く下に下がった。
…なんだ。あたしの応援なんて、いらないじゃん。
「相沢くん、次の夏の試合も頑張ってね!」
「うん、」
あたしは目の前のそんな会話に背を向けると、独りその場を後にした。
……………
「世奈ちゃん!」
その後まっすぐ翔太のところに戻ると、翔太はあたしの名前を呼ぶなり抱き付いてきた。
「どこ行ってたの、心配したじゃん!」
そう言って頭をなでてくれる翔太に、あたしはさっき健にあげるはずだった缶コーヒーを翔太に渡す。
「…はい、これ」
「え?どうしたの、これ」
…あたしは、サイテーだ。
「さっき翔太のためにそこの自販機で買ってきた。飲んで」
「マジで!?ありがとう!」
翔太はその缶コーヒーを受け取ると、
「世奈ちゃん、大好き!」
そう言って、包み込むようにあたしを抱きしめた。