ふぅ、これでやっとサッカー観戦に集中できる。
そう思って、視線を試合中のグランドに戻すと…
「あ、いた!」
そこで、やっと試合中の健を発見した。
「健ー!」
「…つまんないの…」
そして隣で翔太がそう呟いている言葉に構わずに、あたしは健に向かって手を振った。
すると健はあたしに気付いて、笑顔を向けてくれる。
しかし、次の瞬間…
「きゃあー!!」
「!?」
突然、すぐ後ろからそんな女子達の悲鳴にも似た声が聞こえてきて、あたしはびっくりして後ろを振り向いた。
なんとそこには同じ学校の女子達がたくさんいて、みんな目をハートマークにして健を見つめていたのだ。
え、何!健ってこんなにモテてたの!?
そう思いながらまたグランドに視線を戻すと、その時健が勢いよくゴールを決めたのが視界に入ってくる。
「!!」
……健は、あたしが思っていた以上にモテていて、
あたしが思っていた以上に、サッカーが上手いみたい。
「……なんで、」
「え、」
その時何故か突如わけのわからない悲しさがこみ上げて、
あたしが思わずそう口にしてしまった瞬間、翔太があたしを見た。
だけど、あたしはすぐに勢いよく首を横に振ると、また目の前の試合に集中する。
「いや、何でもない。こっちの話」
「……」
…いや。なんで、じゃないし。
アイツ相手にこんな悲しく思うなんて、ほんとどうかしてる。