…健があたしの教室に来るのは珍しいな。
そう思いながら椅子から立ち上がろうとすると…
「…ヤダ」
「!」
さっきからあたしの腰に回されている翔太の腕が、即座にあたしを引き留めた。
「翔太、離して」
より力が強くなる翔太の腕を掴んでそう言うけど、翔太はなかなか離してくれない。
むしろ余計に強くなる。
「(…アイツ後ろから蹴ってやりてー)」
そして健が翔太を見てそんなことを思ってるとは知らずに、あたしは翔太に言った。
「すぐ戻ってくるし、そしたら何回でもチューしてあげるから」
「!」
「だから離して」
あたしがそう言うと、翔太はやっと離してくれた。
「それ、約束だよ」
「うん、ちゃんと守る(と思う)」
切なく背中に突き刺さる翔太の視線に気づかずに、あたしはやっと健の傍に行った。