「話すの、久しぶりだね。」

「う、うん…」

「あたしね、実結ちゃんに話があるの。ちょっと今からいい?」

えっ…!

今から…?

颯が帰っちゃうよ…

でも…

「うん。」

断れない、バカなあたし。

家は隣なんだし、家の前で待ち伏せしよう。

なんだかこうやってどんどん先のばしにしてると、告白出来なさそうでこわい。

「あっちでお話ししよう!」

西田さんがそう言って連れていったのは廊下のすみ。

なんだろ…

「実結ちゃんさ、颯君のこと好きでしょ?」

えっ!?

思いがけないことを言われて、胸がドキッと鳴った。

何て言えばいいの?

黙ってるとそれまで笑顔だった西田さんの顔がみるみる険しくなっていって。

「ほんっと、しつこいよね。浜中工のやつらまわしてまでやったのに、いいとこで邪魔が入っちゃってさ!」

浜中工…

あたしの頭のなかに思い出したくもない、黒のマジックでぐちゃぐちゃに塗りつぶした、記憶が蘇る。

なんでこの事を西田さんが知ってるの?

もしかして、…信じたくないけど…

「西田さんが関係してるの?」

おそるおそるそう言うと、西田さんはにっこり笑った。

「うん、そうよ。だって颯君、全然あたしのこと好きになってくれないんだもん。だから邪魔な実結ちゃんをひどい目にあわせようってね。」