ぼーっとしながら歩いているといつの間にかマンションのエントランスについていた。

そしてエントランスに入っていって、思わず足を止めた。

だってそこには、エレベーターを待っている実結がいたから。

一瞬どうすべきか迷ったけど、避けるのも可笑しいし、やっぱりさっきのことはちゃんと説明しておきたかった。

足音で俺に気がついた実結の目が見開かれる。

そしてくるりと方向を変えると、階段をかけ上がっていった。

「待てよ!」

体は勝手に動いて、実結を追いかけていた。

実結の足で逃げられるわけないのに。

追いつくと、実結の腕をつかんだ。

「…離して!」

思いっきり振り払われる。

こんなに拒絶させたのは初めてだった。

その小さな体のどこからでるんだってくらいの力で、振り払われた腕が少し痛い。