「実結さ、今好きなやつとかいんの?」

あーあ…こんなことが言いたいんじゃねえのに。やっぱり山下の言う通り、俺はヘタレだな。

実結は驚いたように、もともと大きな目を更に見開いて、口を開いた。

「っ…いるよ…」

少し頬を赤らめた実結。そんな顔するくらいそいつが好きなのか?

見えない誰かに嫉妬する。

「あのっ…」
「俺は好きなやつがいるんだ。」

振られてもいい。このまま伝えないでうじうじするよりはさっぱり振られたほうが増しだ。

俺は実結が好き。そう言おうと口を開いた瞬間、実結は持ってきたワークやシャーペンをしまいはじめた。
「そっかー!颯ならきっとすぐに彼女できるよ!」

そんなこと笑いながら言うな。俺が好きなのはお前なんだ。俺は実結が好きなんだ。

「実結?」

「あっ、ごめんね!あたし、今日は帰るね。教えてくれて、ありがとう。」

俺はまだ言えてない。反射的に実結を抱きしめていた。

抱きしめた実結は小さくて、柔らかくて、力を入れたら壊れてしまいそうだった。

「実結、好きだ。」

意外と落ち着いた声が出る。