その日の夜、実結はテスト勉強をしに部屋に来た。これはいつものことで、俺が実結の苦手な数学や物理を教え、実結が得意な英語や国語を俺が教えてもらうというもの。

といっても大体は実結に教えてやるだけで時間はあっという間に経つんだけど。

いつも通り、机にノートやら教科書やらを広げ、シャーペンを片手に真剣に考える実結。俺は全然勉強なんかに集中できるはずもなく、英文をぼーっと眺めていた。

「颯?大丈夫?」

っ…びっくりした。急に顔近づけてくんなよ…まぁ本人は無意識なんだろうけど。

「別に…」

顔、赤くなってないよな?

「ねぇ、ここ教えて!どうしても答えがあわないんだよね~…」

そういって数式をシャーペンで指して俺を見上げる。

「なんでこんな簡単な問題がわかんないんだよ?これ中学の応用だろ?」

俺がそう言うと、あれー?と首をかしげて考え込む。そんな姿もかわいいと思ってしまい、結局説明してやる俺は相当実結に甘い。

「あっ!わかった!!ありがと、颯!」

笑顔で見上げる実結。っ…ヤバい。そんな顔で見んなよ。てゆうか、その顔誰にも見せんなよ。俺以外の奴に…自分の独占欲の強さに、情けないと思った。

そして、山下の声が脳内に響く。告うなら、今だって。

俺はシャーペンを置き、実結に向き直った。