今の決意を一刻も早く小岩井君に伝えたい。

その思いが先走り、頭で考えたと言うよりも思わず口走っていたが正しい表現
かもしれない。

「小岩井君。私と……してください」

先程まで騒然としていた場が凍り付いたようにシーンと静まり、何故か皆が驚愕の表情を浮かべている。

「こい、なに言ってるのよ」

カンナちゃんは驚きに目を剥きだしているし、

「こ…こいは昨日失恋したばかりだから、情緒不安定になってるんだよね?」

懸命にフォローを入れる飛鳥ちゃん、図らずも本日2度目の暴露。

『飛鳥ちゃん。今、私の失恋話必要だった?』

失恋のワードに心がジクジクと痛み出すけど……

兎に角、小岩井君を説得するのを先にしようと私は話しを続ける事にした。

「私はプロじゃないから、満足して貰えるか分からないけど……」

飲んでいたカクテルを後藤君がブーーーと音を立てて口から霧みたいに噴射させている。

……汚いけど放って置こう。

「いつか小岩井君の役に立ちたいってずっと思ってました。

経験で補えないところはこれから学んで知識を身に付けて頑張ります。

だから私と一緒にダイエットをしてください……お願いします」

思いの丈を熱く語り真っ直ぐに小岩井君の瞳を見つめているのに、耳まで真っ赤になっている彼にプイと視線を逸らされて落ち込みそうになる。

「「「はぁーーー」」」

そんな私の耳に聞こえてきたのは深いタメ息と皆の呆れ声。

「主語を抜かして喋るな!」

「ダイエットを先に言え!」

「錦野、おまえさー『小岩井君。私と…してください』そんな紛らしいこと言ったら普通セッ…「遼。後藤の口を今すぐ塞いで…なんなら息の根止めてもいいから」

後藤君の話を遮り遼君に指示を出す飛鳥ちゃん。

「はい、はい仰せの通りにお姫様」

軽口を利きながら言われた通りに後藤君の口を楽しそうに塞いでいる遼君。

モゴモゴと聞き取れない言葉をそれでも発し続ける後藤君は、拘束された体を振り払おうと必死の形相だった。