手段はとても褒められたものでは無かったけど後藤君なりに小岩井君のことを思い、今日の合コンを主催した事が判明した為カンナ裁判長より執行猶予が与えられた。
後藤君は小岩井君のことを本当に心配をしているんだなと分かったら、下がりっ放しだった彼の評価が赤丸急上昇だ。
飛鳥ちゃんも同じように思ったらしく後藤君を褒める言葉をかけている。
「へえー後藤にも意外と良いとこあるんだね」
「木村、そこは素直に褒めようよ『にも』も『意外』もいらないから……
もしかして俺に惚れちゃった?
俺たち今日から付き合っちゃう?」
「ムリ、無理無理無理無理無理……」
「ひでーーーそこまで拒否んなくて……なんかもうショックだわ」
そんな二人の可笑しなやり取りが静まり返っていた場を一転させ笑いの渦に包み込む。
皆の楽しそうな笑顔を見つめながらもいつの間にか周りの騒音が消えて行き、私の思考は3年前へと彷徨い始めていた。
「デブのくせに男に色目使うとか身の程知らず」
当時辺見さんの言葉に言い返してくれたのはカンナちゃん。
その怒りのまま、私にダイエットするように命じたのは唯々私を思っているからこそ憎まれ役を買って出てくれたのだと思ったら嬉しさで涙が出そうになる。
『合コン』メンバーの女の子から小岩井君が”デブ男”と蔑みの言葉を浴びせられたのを黙って聞いて居られなかった私はいま彼の事をどう思っているのだろう?
そしてあの頃の私は彼の事を本当はどう思っていたのだろうか?
自分自身でもモヤモヤとして掴みきれない思いの中で、唯一ハッキリとしているのは小岩井君の役に立ちたいってことだけだ。
「現世と言わず来世でも困った事があったら全力でお助けします」
卒業の日に小岩井君の背中に誓った言葉を実行に移す日がやって来たのかも知れない。