入部した日から、週2回のペースで美術部に顔を出している。

この間入学したばかりのような気がするのに、もう3年目を迎えているのだから

「来年の春には卒業かぁーここで時間を過ごすのもあと少しなんだよねー」

残り少ない高校生活に感慨深くなりそんな言葉が口から零れる。

「てか……このデッサンいつから始めたっけ?」

ローマ帝国初代皇帝アウグストゥスの腹心、アグリッパの胸像を見つめながら独り呟く。

陰影を付けては消し、陰影を付けては消しを繰り返していつまで経っても仕上がる様子のない石膏デッサン

そして今日も思うのは……

「どーして見ながら描いてるのに……微妙にズレてんだろう?」ってこと。

いつまで経っても上達しない画力に「はぁー」とため息を付き、何気なく視線を向けたグラウンドで奇跡は起きる。

世界的に有名な美術館でしかお目にかかれないような彫刻……

そう……まるで彫像のような完璧な容姿をした人間がグラウンド狭しと走り回っているのを目にしたからもう大変。

雷に打たれた様に動きを止めた体の中で心臓だけがもう凄い勢いでドクンドクンと波打っている感じ……

私の目の前に太陽神が降臨した瞬間だった。