洸ちゃんの匂い…。
大好きな匂い、安心する。

「洸ちゃん…好きだよ?どこにも行かないで…」
「……ばーかそんな面してねーで飯食いに行くぞ!」

ねぇ洸ちゃん。
この時私は想いもしなかった。
この時洸ちゃんがどこにも行かないって。言ってくれなかったことに意味があるなんて想いもしなかったんだよ。
もっと洸ちゃんとの時間を大切にしていれば。




それからの月日もいつも通りに流れた。
でもそんな幸せな時もそんなに長くは続かなかったんだ。

その日のお昼休み。
私はいつも通り萌香とお昼ご飯を食べていた。
「それにしてもあんたこれから松岡君とどうすんの?」
「ん?洸ちゃんがどうかしたの?」
「はぁ?あれだよ、留学の話し!」
「…りゅう…学?」
留学?留学ってなに?
私なにも聞いてないよ…?
「え、ちょっと梨依。あんたなにも聞いてないの?」
「え、ちょ、ちょっと梨依!!」
私は走り出していた。
いつも洸ちゃんが友達と屋上でご飯を食べていることを知っていた。
屋上に。走った。
気づいたら涙が溢れ出ていた。


―バンッ!
「洸ちゃん!!」
「おう梨依。どうした?…って、え!?なんで泣いてんの!?」

「わりいちょっと行ってくるわ。」
と洸ちゃんは一緒にいた友達に軽く言うと私の手を引いて向かった先は中庭だった。