「で?どーしたの?」
いつの間にか涙は引いていた。
「…留学。」
洸ちゃんは少しビックリしたような顔をして、寂しいような、悲しいような笑顔で
「そっか。聞いちゃったか。ごめんな。俺アメリカに行く。」
あまりにも非現実的な事実に一瞬声を失う。
「アメ…リカ?なんで?なんで私になにも言ってくれなかったの?私の事…嫌いになっちゃったの?」
「結構有名なバスケのチームから声がかかったんだよ。っていっても下の方のチームだけどな。でもさ。本気で夢追いかけたい。絶対にあの大きな舞台でバスケしたいんだ。ごめん。」
「…洸ちゃんの…バカ!!!」
「あ、おい梨依!」

私は走り出していた。夢中で走り出していた。
引いたはずの涙がまた溢れ出していた。
教室に戻るとクラスメイトの視線が痛いくらいに突き刺さる。

洸ちゃんは追いかけてきてくれなかった。

「萌香…帰る…。」
「わ、梨依!…分かった。先生には私からなんか言っとくよ」
すべてを察したかのような親友の言葉はとてもあったかかった。