「何惚けて、…はぁ。お前と亮くんの部屋は同室って言っただろ」
ちよっと待て。ダメ親父。
あたしが聞いていたのは“亮子ちゃんと同室”で、男の亮くんとは聞いていない。
仮にも高校2年生の健全な男と、純粋な女を仕切りのない空間で暮らせと?
「ほら、いったいった!」
「ちょっ!離せ!バカオヤジ!」
ぐいぐいと背中を押されて目の前には既に2階への階段。
「案内お願いしてもええですか?」
そして隣にはニッコリ笑う彼。
気がついたのは彼が関西弁を話すこと。どうして関西出身の彼がうちになんかホームステイするんだろう。
色々疑問が浮かぶが、今はそんなところじゃない。もう決まっちゃってるんだから。
おとんが言い出したら聞かないことと馬鹿だということは娘のあたしが一番良く知ってる。
だけど、彼も彼で何も思わないのかな。ホームステイ先で同じ年の女の子と同室なんて。まあ、彼のビジュアルは見れば見るほど整っていて、女に困ってるわけでもないだろうから襲う用事もないんだろうけど(私に襲われる心配はあるかもしれない)
それに、一応こんなボロ屋だけど一応ホームステイ先だから、もしかしたら彼はものすごく気を使っていて言えないのかもしれない。
そんな彼にはホントにほんとーに悪いけれど狭い5畳半の屋根裏部屋に行ってもらう事にしよう。
「つ、ついて来て下さい…」
だけど、だけど!なんだかんだ、美味しい展開じゃないの!?
だってこんなイケメンとひとつ屋根の下どころか、同じ空間の中!こんなこと二度とない漫画みたいなシュチュエ―ション。おとんに万歳!感謝感激雨あられ!
しかし、屋根裏部屋はあたしの部屋からしか行きき出来なくて、今はただの物置部屋。埃だらけだし、天井低いし。だけど小さな窓からはちゃんと陽が差し込む。
寝顔とか見られちゃうかもしれないけど、そういうのにはあまり抵抗がないから大丈夫。着替えは他の部屋でするとして、うん、大丈夫。
「えっと、ここがあたしの部屋で…」
がちゃりと部屋の扉を開けると、そこはあたしの空間。赤にオレンジに黄色。原色が目一杯に広がる部屋だ。
そしてすぐさま椅子に乗り、屋根裏部屋への入り口、つまり天井にある小さな扉を開いた。
その瞬間、埃がどさりと落ちてきてびっくり。…何年ぶりに開いたんだろ。
「で、あなたのお部屋はこの屋根裏部屋です」
掃除は手伝うから、なんて言いながら彼に向く。
すると彼はニッコリ可愛く笑って言った。
「アホか。嫌に決まっとるやろ。」