あたしのおとんは3日前の事すら忘れる馬鹿。そんなこと物心ついた時から知っていた。でもここまで馬鹿だと娘のあたしもお手上げ状態。だけど、物は考えようだと誰かが言っていた気がする。そう、だって彼は男前で性格も花丸。これってもしかしたらもしかすると運命的出会いなのかもしれない。



‐act.03‐



「がっはっは!ま、男でも女でも変わりはないしな!」




…いや、あるよ。

お母さんの隣に腰を下ろしたあたしは、陽気に彼の肩を抱くおとんをジッと睨み付けた。

彼はそんな中年親父に嫌な顔ひとつみせないで、ニッコリと笑う。


(う…かっこいい…)


いやいや、ちがうちがう。どうしてくれんのさ。あたしの恋バナ計画を!服の貸し借り計画を!



「亮くんは嫌いな食べ物とかあるか?な!母さん!」

「そうね、教えてくれると嬉しいわ」

「いえ、嫌いな物なんてないですよ。」

「はっはっは!本当に鈴子と大違いだな」



おとんだって未だピーマン食えないくせに。そんな事を小さく溢してお母さんが注いでくれたオレンジジュースのグラスに唇をくっ付ける。



「こら、鈴子。はしたない!」

「ストローでぶくぶくやらないだけマシだもん。」



そう言ったあたしを見て亮くんと呼ばれたその男の子は小さく笑った。な、なんか…恥ずかしい。



「あ、あたし!優大の家行ってくる!」




なんだかこの空間に耐えきれなくなりガタンとちゃぶ台に手を付けて、立ち上がろうとすると。




「いかんいかん。お前は部屋を案内するんだ。」

「……………は?」




部屋って、どこの部屋?