「じゃあアタシは下のベッドで、」
「逃げんな、抱き枕。」
「はっ!離しっいやーっ!」
そこをガシと捕まえられ、ズリズリと布団の中へ引き摺り込まれた。
瞬時に包まれるぬくもりと、彼の匂い。
…コイツ本当に寝惚けてる?寝惚けているわりには力が強い。
「な…なにが嬉しくて、アンタと一緒に寝なきゃなんないのよ」
そう呟いた直後、亮助の腕が身体に巻き付いた。ぎゅうと抱きしめられて、さっきよりも暖かい温もりが伝わってくる。
…ばか、ばかばか。どきどきしないはずがないじゃない。
「抱き心地最悪。」
「…おまえなんて死んでしまえ」
いくら憎まれ口を叩かれたって、憎まれ口で答えたって中々退いてくれない頬の熱。どうか亮助にバレませんように、なんて心の中で呟いた。
…亮助はこんな風に女の子を抱っこして寝るの、慣れっこなのかな。そう思って耳を彼の心臓に当ててみる。
「っ、な…なんやねん」
あれ、…可笑しい。亮助「の心音、あたしより速いの。めちゃくちゃドキドキいってる。
「なんで…?」
「…は?」
「亮助の心音やばいよ。なんかの病気?」
こいしている間も、どきどきどきどき。ま…まさか、心臓病とか…。
「病気ちゃうわ。気にすんな。」
そう言った時、月明かりのお陰で亮助の顔が見える。その表情が少し照れているように見えて“あぁそうゆうことか”と、やっと理解できた。
ドキドキしてるのはお互い様なんだと。
「ばーか…りょーすけ。」
「うっさい…はよ寝ろ。」
彼は寝惚けたふりをして、眠れないあたしの抱き枕になりに来たみたい。
“演技上手だったよ”そう言って馬鹿にして笑ってやりたかったけど、すぐに重たい瞼が下りてきて眠りについた。
それは、亮助の温もりのお陰で。